進路も師匠も、直感で突き進む【桂源太】
「将来は落語家になります!」学生落語のステージ上でそう宣言し、大学卒業後すぐ落語家の道へ。現在、寄席はもちろんテレビでも活躍中の桂源太さんに、師匠である桂雀太さんとの出会いや落語家としての生活、落語への想いなどを伺いました。
この噺家に聞きました

桂源太
2018年、桂米朝一門・桂雀太に入門。2020年に年季明けを迎え、現在8年目。大阪・繁昌亭や兵庫・喜楽館をはじめ、さまざまな落語会で活動中。
この師匠とは絶対に気が合う!「ひとりで面白い」落語家を志した学生時代

落語界の中では、年齢的にもかなりお若いですよね。
めちゃくちゃ若手ですね。今大阪には250人ぐらい落語家がおるんですけど、下から15人目ぐらいやと思います。
落語の世界では上下関係が年季順(入門した順)なので、40歳を超える僕の後輩もいれば、僕より年下の先輩もいます。社会人を経験してから入門される方も多いので、年上の後輩の方が多いと思いますね。
源太さんは、大学を卒業後すぐに入門されたんですか?
そうですね、3月に卒業して4月に入門しました。4年の夏に大学の単位を取り終えて、11月に入門志願したんです。そこで「次の4月からおいで」となったので、いわゆる新卒とちょうど同じタイミングでした。
「落語家のなりかた」ってネットで調べてみたら、「落語家というのは誰かの弟子にならないといけないらしい」というのを知って。そこからいろんな師匠の舞台を見にいきました。ほぼ全員見たぐらいのときに「ええ人やろなぁ、なんか気ぃ合いそうやなぁ」って思ったのが、今のうちの師匠(笑)。フィーリングで仲良くなれそうやと思いましたね!
ただ、いざ入門志願したくても何をしたらいいかわからへん。だから師匠の独演会があるときに、会場近くの自販機の陰に隠れて「今から打ち上げ行くぞー!」って出てきたところをいきなり呼び止めて、「ちょっと待って!弟子にしてください!」って。もう告白みたいな勢いで言いました。

すごい!ロマンチックですね!
良い言い方や(笑)それで「弟子にするかは分からんけど、ひとまず話は聞くわ」となって、その1週間後ぐらいに話を聞いてもらいましたね。
ただうちの師匠ね、ちょいちょい休む人なんです。入門志願をしたのは11月やったんですけど、「俺12月から3月ぐらいまで休むねん」って言われて。「弟子かどうかわからへん状態になるけど、それでも良かったら一旦待っといて」という感じでした。
やからその時点ではまだ弟子入りが決まったわけではなかったんですけど、勝手に確信はしてました(笑)。絶対気ぃ合うやろ!と思ってたので。
「弟子入り」と聞くとすごく厳格なイメージがあったんですが、けっこう寛容だったんですね。
うちの師匠は、師匠にしてはちょっと若いんです。「落語の師匠」っていうと、普段から和服を着てるようなおじいちゃんみたいなイメージがあるでしょ?うちの師匠は当時41歳やったかな。服装とかもカジュアルだったので、イメージとはちょっと違うかもしれないですね。
なるほど。他にお弟子さんはいらっしゃるんですか?
僕がはじめてなんですよ。僕だけですけど(笑)一番弟子ですね。
学生時代は落語研究会(通称:落研)に所属されていたと伺いました。
落語研究会にいたときは、実は落語じゃなくて漫才に興味があったんです。最初は漫才師になりたかったんですけど、大学のお笑いサークルはあんまり自分には合わへんかって。
落語研究会は全くイケてないんですけど、面白い人が多かったんです。1年生から入部志願する人はほぼいなかったみたいですけど(笑)。漫才もできるよって聞いたので、ちょっと入ってみるか〜ぐらいのテンションでした。先輩たちからは「志願兵が来た」って言われてましたね!
やから最初は全く落語はやってなかった。訳が分からなくて、何がおもろいんや!とむしろ嫌いでしたよ(笑)。
落研では皆さん落語をやるもの、という場所だったんですよね?
一応入会したら1個だけ落語をやらなあかんのですけど、それさえ終わったらあとは自由にやっていい。とりあえずイヤイヤ1個覚えて、何とか合格を目指す感じでしたね。
ただこれがけっこう厳しいんですよ。先輩もそんなに落語は好きじゃないのに、なぜか後輩には厳しい。「今のじゃマルはあげられないな」とか言われてました(笑)。
何とかそれを突破して、そのあとは漫才ばっかりやってましたね。でもしばらくして、「漫才は相手と同じ熱量じゃないとできないけど、落語は1人でできる」っていう点がいいなと思い始めて。そう思っているうちに、徐々に漫才師から落語家になりたいな、と心境が変化していきました。

1年生の途中ぐらいには、落語会に行ったこともないけど何となく「なりたいな」と思ってましたね。
「落語家になりたいかも」となったとき、周りの反応はいかがでしたか?
落研の友達には芸人を目指してる人も多かったので、そんな人らは「いいやん!」みたいな反応でした。とはいえ、落研から実際に落語家を目指す人はかなり珍しい。僕より先輩で落語家になった人っていうと、8年ぐらい前に卒業した人が最後になるんちゃうかな。
ただ、僕が所属してるときに突然「落語、実はめっちゃおもろいやん」というブームがきて、僕含めた前後2学年ぐらいから、4人が落語家になりました(笑)。
ただやっぱり家族はめちゃくちゃびっくりして大反対でしたね。「漫才師になりたい」とすら言ったことがなくて、ずっと「銀行員になりたい」って嘘ついてたんです(笑)。特に芸能関係でもない一般家庭なので、「なんで落語家…?意味わからん」という反応でした。
では「入門する」と決めてから、かなり説得したんですか?
そうですね。ただ言葉で説得しても無理そうやったんで、認めざるを得ない状況になればいいんじゃないかと。とにかく必死に落語をやってました。
大学2年生のときに学生落語の大会があって、千人規模の会場で本戦に参加して優勝したんです。そのステージ上で司会者さんに「将来何になりますか?」と聞かれて、勢いよく「落語家になります!」って言ったんですよ。会場はもちろんワーッて盛り上がったんですけど、実は両親が内緒で見に来てて。そんなやりとりを見て、これだけやる気があったらしゃあないわ、という感じで最終的には認めてもらえました。
落語家人生のスタート。まずは「身の回りの使えるヤツ」に

入門されてからデビューまでは、どんな流れでしたか?
落語家の生活はやっぱり少し特殊です。落語の稽古のほかにも、出囃子(でばやし)の太鼓の練習とかもしてました。楽屋で先輩の着物を畳んだりもするんですけど、これが高速で畳まないといけなくて(笑)。モタモタしてると「こいつ使えへんな」ってなっちゃう。
落語家は人数が多くはないので、いうたら村社会なんです。みんな家族やし、みんな仲間。でもだからこそ、仲間入りするには皆さんに認めてもらえるようなことをしないといけない。落語を覚えるのはもちろんですけど、どちらかというとまずは「身の周りのちょっと使えるヤツ」になるという感じでいろんな仕事をしていました。
入門から半年ぐらい経った頃、急に「この日に舞台やから」って言われて10月に初舞台。あべのハルカスが初舞台でしたねぇ。師匠が開催している落語会で、80人でいっぱいぐらいの規模でした。
お弟子さんになってからはどんな生活でしたか?朝早くて夜遅いなど、お弟子さんならではの大変さもあったんでしょうか。
朝ね、11時からやったんですよ。よその一門で厳しいところやったら「毎日7時に来なさい」とかもあるんですけど、うちは11時とだいぶゆっくりめでした(笑)。
そもそも入門すると、毎日師匠の家に行くことになるんです。2〜3年ぐらいの修業期間は、師匠の付き人みたいなことをするんですが、僕は実家から「通い弟子」っていうシステムで通っていました。うちの師匠は大体週5日ぐらい仕事をしてたんですけど、お休みの日も家に行かせていただいてましたね。
家では掃除もするし、5歳の息子の遊び相手もします。そうそう、一番しんどい仕事が金魚鉢の掃除!「嫌やー!」と思いながらやってました(笑)。
約2年間そういった生活を送って、修業期間があけることを「年季明け」といいます。そうなると少し自由になって、毎日行かなくてもいい、となるんです。いわゆる独立というような状態で、そこからみんな忙しくなりますね。
ただ僕が年季明けしたのが、2020年とコロナ禍真っ最中。しばらくは舞台もなくて、2022年ぐらいから忙しくなってきたかな。

今は、師匠の雀太さんとはそこまで頻繁には会わないですか?
なかなか会わないですね。師匠が開催する落語会とかには、前座によく呼んでもらったりしますけど、今は多分月1〜2回ぐらいしか会ってへんのちゃうかなぁ。
舞台がある日はどんな1日を過ごされているんですか?
落語会は昼と夜にあるんですけど、昼やったら夕方ぐらいに終わって、そのまま解散っていうことが多いです。夜やったら入りが17時ぐらいで、終演が21時過ぎとか。打ち上げにいって終電ぐらいが多いかなぁ。
舞台の数でいうと、去年は300〜400回ぐらいあったので平均1日1回ぐらいですかね。前座のうちはみんな割とそれぐらい忙しいんちゃうかなぁ。
お休みの日なさそうですね…!
いや全然ありますよ!「この日休みたいな」と思って自分の裁量で仕事を入れない、とかもできるので。去年は1人で石垣島に行ったりもしました!
意図的に休みを作らなくても、平均週1日ぐらいはお休みになるんですけど、僕はできるだけ休みたい人間なので(笑)。週2日は休みにしてるかな。
ほかの人のスケジュールはわからないけど、やっぱり前座の人はみんな忙しいですねぇ。。ただ、今は若手ということでお仕事をいただいていますが、芸歴を重ねて前座としては使いにくくなってくると「どれだけ実力があるか」が焦点になってくるらしいです。そういう怖い話はあんまり考えないようにしています(笑)

お休みの日はどう過ごされているんですか?
やっぱりお着物の印象が強いので、普通のお洋服も着られるんだ!と思ってしまいました(笑)。
洋服も着ますよ(笑)!でもわかります、普段から着物で畳の家に住んでそうなイメージですよね。
何してるかなぁ。基本的には一人行動が好きですね。明石海峡大橋の近くにのんびり座れる公園があって、この間はそこに1日中おったりしました。あとは水族館が好きなので、1人で水族館行ったりとか。海遊館とかよく行きます。
落語家としてのこれから

最後に、落語家としてのこれからに対する想いを聞かせてください。
落語家として仕事をしていると、やっぱり一般の目線っていうのはどんどん失っていくような気がしています。学生の頃に感じてた「落語ってなんか難しそうやな」「古そうやな」っていう気持ちはけっこう大事やと思うんです。落語にそういったイメージを持っている人は多いんやっていうことを、落語家になった今、改めて感じているので。
なので、そういった観客の目線に寄り添って「意外と簡単やん」「おもろいやん!」など、落語のイメージを変えられるような落語家になりたいです。落語の入り口になりたいですね!
※本記事は2025年11月1日時点の情報です。
文:Fuka Tsujimoto
写真:Kyoto Tanaka
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桂源太
2018年、桂米朝一門・桂雀太に入門。2020年に年季明けを迎え、現在8年目。大阪・繁昌亭や兵庫・喜楽館をはじめ、さまざまな落語会で活動中。
