落語をもっと身近な存在にしたい【YOSERU代表×桂源太】
落語を見たことがない人に「もっと落語に興味を持ってほしい」という想いを元に発足した、関西拠点の落語プロジェクト「YOSERU(よせる)」。
どんな存在なのか?これからどんな活動をしていくのか?発起人のお二人にお話を伺います。
この方たちに聞きました

北川英太郎(YOSERU代表)
大学時代の友人・桂源太が落語家になったことをきっかけに寄席に通うようになり、落語の魅力に惹かれる。「もっと多くの人に落語の魅力を知ってもらいたい」という想いに共感した仲間とともに、YOSERUを立ち上げた。会社勤めの傍ら、YOSERUの代表として活動を続けている。

桂源太
2018年、桂米朝一門・桂雀太に入門。2020年に年季明けを迎え、現在8年目。大阪・繁昌亭や兵庫・喜楽館をはじめ、さまざまな落語会で活動中。
「落語の情報、探しにくいな」から始まった挑戦——YOSERU誕生のきっかけとは?
お二人の間で、「YOSERUをやろう」となったタイミングやきっかけを教えてください。
北川さん
僕は大学時代の友人である桂源太くんが落語家になったこともあって、たまに落語を見に行っていました。それで以前、会社のイベントで落語会を企画したんですが、それをきっかけに会社の先輩が落語にハマってくれて。その先輩とは前から「普段の仕事以外で楽しいことがしたいよね」という話を一緒にしていたので、「じゃあ落語で何かできないか」と話が盛り上がりました。
とりあえず落語について色々調べてみよう、行ってみようということでネットを見ていたんですが、どこでどんなイベントが開催されているか、あんまり出てこなくて…。そもそもどうやって行ったらいいか、わからなかったんですよね。

落語の情報って調べにくいな。じゃあそれって作る価値があるんじゃないか?というところから、落語についてのサイトを作ってみよう!という話になりました。
僕が落語を見るようになったのも、友人に彼(源太さん)がいたからなので、そこで「よし、声をかけてみよう」となったんです。
源太さん
居酒屋でね(笑)。普通に飲みに行っていて、僕がトイレから戻ってきたら、ごそごそとクリアファイルが出てきて。ホッチキスで止めた資料が出てきて、突然プレゼンが始まったんよ(笑)。なんや!と思ったら、このYOSERUの話でした。
そのときは、YOSERUに誘うのが目的だったんですか?
北川さん
もう完全に、口説き落とすための会でしたね(笑)!
源太さん
僕からしたらめっちゃ嬉しい話です。落語を好きになってもらえて、さらにみんなに知ってもらいたいと言ってくれてるんですから。

はじめは「(北川さんたちにとって)何の得になんねん」って言いましたもん。落語家である俺は嬉しいけど、逆にええんか?という感じでした。
北川さん
そうですね。僕も、友達やからこそ中途半端な気持ちでは提案したくなかったんです。だからこそ、しっかりとした資料も用意しました。YOSERUについて本気で考えてるから、逆に言うと(源太さんに)協力もしてもらいたい。一緒にやっていこうよ、という気持ちでした。
落語家の方が、いわゆる外部の人と活動することは珍しいですか?
源太さん
やっぱり落語家同士でいることが多いんじゃないでしょうか。生活スタイルが似ているから都合を合わせやすい、というのは確かにあります。ただ僕は逆に、一般の目線がどんどんと失われていくような気もしていて…。
学生の時には、実際に僕も「なんか難しそうやな」「古そうやな」っていう印象があったので。そういう気持ちが(自分には)なくなってきてるなぁと思うなかで、「一般の目線から発信することで、もっと身近に感じてもらえるんじゃないか」と(北川さんに)言ってもらえたので、嬉しかったです。

僕自身からはだんだんなくなっていく目線で落語を発信していけたら、今まで落語を知らなかった人に届くんちゃうかなと思っています。
学生時代からの友情がつないだ落語の縁
もともとご友人だったということですが、これまで「落語について何かやろうよ!」みたいな話をしたことは全くなかったんですか?
北川さん・源太さん
ないよー!!(笑)
源太さん
大学の学部が一緒の同級生で、学籍番号が近かったんで一回生の時に仲良くなったんです。大学卒業後は全く別の道に進んでいますが、卒業後も舞台を見にきてくれています。
「友達が落語家」ということで、落語はわりと身近にあったんちゃうかなぁ。ちょっとずつ落語を好きになってくれて、こういう話をもらえたので、こんなに嬉しいことはないです。
学生時代にもよく見に行っていたんですか?
北川さん
一番最初に見に行ったのは、一回生の学園祭ですね。
源太さん
あぁー!(笑)
北川さん
落語研究会は、校内でもどこかよくわからない小さい部室みたいな場所でずっと落語をやっていたんです。「学園祭で(落語を)やるから来てや」と言われて、当時仲の良かった友達と一緒に見に行きました。
普段の松山直樹っていう人間らしさも感じるのに、落語をやっているというのが面白いな〜と思いました。それが初めて見に行った落語ですね。

源太さん
へぇ、全く覚えてない!(笑)でも確かによう来てくれましたね。僕にとって大事な舞台は大体来てくれました。学内はもちろん、公民館とか学外でのイベントにも。
だから、僕がワーっとウケている瞬間も見てくれているんですけど、めっちゃスベってる時も見られているから、どんな姿を見られても恥ずかしくないかもしれないです(笑)。
落語家を志す友人を、どう見ていた?
源太さんは一回生のころから落語家を志したということでしたが、友人という立場から見て、どう感じていましたか?
源太さん
それはちょっと僕も聞いてみたいですね。
北川さん
そうですね。大学時代、学部の友人同士がすごく仲良くて。各々が入ってるサークルやバイトなどのコミュニティもあるけど、それとは別に学部での繋がりがしっかり続いていたんです。
そんな中で、2回生か3回生の時かな。(源太さんが)全国大会で優勝したんですよ。以前から予選の話とかも聞いてて、「次こそは!」という意気込みを知っていての優勝だったので、もうその時点で「多分落語の道に行くんやろうな」と思いました。
友達贔屓じゃないですが、彼のことをめっちゃ面白いと思ってて(笑)。学生最後の落語も見に行ったんですが、それもめちゃくちゃウケてて面白かったんです。だから落語家になることに対しては、「頑張ってほしい!」という気持ちが強かったですね。シンプルに尊敬していました。
源太さん
十人ぐらいで仲良かったんですけど、十人おったら一人ぐらいそういうヤツいてほしいですよね!(笑)
北川さん
あ、グループのバランス考えたんや?
源太さん
もちろん、バランスを考えて泣く泣く落語の道に進んだよ!(笑)

大学卒業後って、学生時代の友達とは疎遠になりがちじゃないですか?
北川さん
僕らは、大学卒業してからもめちゃくちゃ会ってましたね。
源太さん
例えば誰かが結婚する時とか。年一ぐらいで旅行に行ってたんちゃうかな?
卒業後もそれだけ仲が続くってすごいですね。
源太さん
確かにめっちゃ仲良い(笑)。それこそ僕が落語の修業期間に入ってからは都合が合いづらいこともありましたけど、ずっと交流は続いていますね。
ではYOSERUをやろう!となった時も、あまり突拍子もない感じではなかったんですか?
北川さん
それは全然なかった。普通に友達として関係性が継続している中で、パッと話した感じです。
仲の良い何人かには、「YOSERUをはじめる」ということも伝えました。皆んなもちろん一緒に落語を見に行ったこともあるので、「めっちゃええやん!」というような反応でしたね。
「若者にはまだ遠い?」落語と世代の距離感
実際に落語を観にくる方はどんな方が多いですか?最近は若い方もちらほら見かけるとか…。
源太さん
どう?客席で見てて。
北川さん
僕ら世代で「客席の中で一番若いな」と感じる時はやっぱり多いですね。
ただ若者向けの企画をやってる方はいらっしゃるので、「落語 × ○○」みたいに何かとコラボすることで、若い層をもっと取り込もうとする動きはあるんじゃないかなと思います。

源太さん
音楽の方や、漫才師さんとコラボしたりとかね。そういったイベントはありますが、やっぱり普通の落語会では若い人は少ないですね。
YOSERUは「若者向け」とまでは言わずとも、あまり詳しくない人にも落語を伝えていきたいですね。
北川さん
そうですね。YOSERUという名前は、全体的なプロジェクト名のようなイメージをしています。その中で、このウェブサイトは普段の寄席情報などを発信していくメディア機能として存在しています。
普段から落語を見にいく人がもっと寄席を探しやすくなるというのはもちろん、記事やイベント開催など落語との新しい接点を作る、というのがやはり一番のやりたいことです。
落語をまずは一回見に行ってみて、そこで興味を持たなければそれはしょうがない。でも、その「まずは一回」を作るというのが難しいと思うので、そこをどうにかやっていきたいですね。
源太さん
若い人じゃなくても、「落語は何となく知っているけど、実際に聞いたことはない」という人はめっちゃ多いと思うんですよ。なので、そんな人にもアプローチしていきたいです。
今って、限られた数の落語ファンを落語家で取り合っているような状態なんです。それはあんまり良い状態ではないかと思うので、(今まで落語に興味がなかった人に)新しく興味を持ってもらえるように頑張っていきたいです。
体験を通じて落語をもっと身近に
どんな活動をしていきたい、こんなコンテンツを作っていく、など今後の具体的な予定はありますか?
北川さん
うーん…バスツアーとか。落語の演目で出てくる土地は基本的にどこか実在の場所なので、そこに実際に行って観光して、最後にその場所にまつわるネタを一席、みたいな。
ターゲットはまだ不明瞭ですが、面白いんじゃないかなと思います。
源太さん
例えば中之島に今もかかってる「なにわ橋」とかは、そこでの話が結構あります。実際に橋を見た後に落語を聞いたら、「あそこから見てたんや」と想像がつきやすいかなと思います。
落語に出てくる場所や地名は今も残っているところがたくさんあるので、少し言葉は古くても「ああ、あの場所のことね」とわかることで身近に思ってもらえたら良いですね。

実際に参加してもらうイベントもどんどんやっていきたいですね。
北川さん
そうですね!やっぱりネット上でどれだけ発信をしても見られないよな、と思うところもありますし。
僕もそうなんですけど、別にYouTubeで落語は見ないんですよ。眠くなってくるし、やっぱり臨場感がないから…
源太さん
俺も見いひん!しんどいもん(笑)。集中できひんしな。
北川さん
そうそう。やっぱり実際に観てほしいというのが一番なので。まずはバスツアーなり音楽と絡めるなり、落語以外の何かをフックに興味を持ってもらいたいです。
体験を通じて落語をもっと身近に

最後に、YOSERU始動にあたっての想いを教えてください。
北川さん
僕らは(落語に関しては)初心者という立場なので、落語家さんに対してのリスペクトを持っておかないといけません。落語家の皆さんにとっても意味のあることをやっているという自信はあるので、その気持ちを忘れずに、あくまでもサポートする立場として落語界に貢献したいと思っています。
一方で落語家の皆さんからも、「こういう宣伝をしたい」「こういうことをやってみたい」などの相談も受けられると嬉しいです。双方にとってメリットがあることをやっていきたいので、演者側と裏方側で協力しあえるような存在になれたら良いなと思います。
源太さん
ちゃんと(落語の面白さを)伝えることができれば、落語家にとってはめちゃくちゃありがたいこと。今いる落語ファンにとっても、これから新しく落語に興味持ってくれる人にとっても役に立つ存在になると思います。
堅苦しく考えずに、YOSERUのページで少しでも落語を楽しんでもらいたい。ちょっとでも興味がある人に、もう少し落語を知ってもらいたい。一人でも多く実際の落語に足を運んでもらいたい。
そんな落語への純粋な想いから発足したYOSERU。ぜひ、他のコンテンツもご覧ください。
※本記事は2025年11月1日時点の情報です。
文:Fuka Tsujimoto
写真:Kyoto Tanaka
